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優雅な僕が綴る優しいマガジンです。

2023 FIFA女子ワールドカップ ベスト8

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2011 FIFA女子ワールドカップドイツ大会。

第6回目となるこの大会で日本は初めて世界一の景色を見た。

 

なでしこジャパンとって第二黄金期となる池田政権。

グループステージを3戦3勝で勝ち上がり、ラウンド16でノルウェーを下す。

続くラウンド8。対する壁は強豪スウェーデン

その戦いを振り返る。

スターティングメンバー

ラウンド16ノルウェー戦から中5日。

スターティングメンバーの変更は一人。

左WBに入っていた遠藤純に代えて杉田妃和が入った。

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GK 1 山下杏也加

CB 12 高橋はな

CB 4 熊谷紗希

CB 3 南萌華

RWB 2 清水梨沙

DMF 10 長野風花

CMF 14 長谷川唯

LWB 6 杉田妃和

ST 15 藤野あおば

ST 7 宮澤ひなた

CF 11 田中美南

試合の入り

圧倒的な高さ、フィジカル、スピードを持つスウェーデンに対し、

日本はまず5-4-1のブロックを作って構える戦い方を選択。

機を見て藤野、宮澤の2人が外切りプレスでスイッチオン。

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その流れで全体を押し上げ、ハイプレスに行くも、

なかなか奪いどころが定まらないという入りだった。

 

スウェーデンはフィジカルはもちろんだが、

近年サッカーの風潮からか、足元の技術に驚かされた。

あの身長を持って、なおかつあれほどボールを持てるとは。

世界の女子サッカーがどれほど発展してきているかを感じた。

 

奪いどころであるボランチのところ、相手のサイドバックのところで奪い切れる形が作れず、苦しんだ印象。

ボランチは連動してプレスをかけているものの、圧倒的な身長差からくるフィジカル、確かな技術でいなされる。

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また、日本のボランチ2枚の脇にトップ、サイドの選手が下りてきて、中央で局面的数的優位を作られた。

サイドに関しては、日本のWBが強気にバチンと行けず、逃げ道として前を向かれる展開が多かった。

 

WBが相手SBまでプレスに行くということはその分、自分の背後を空けることにつながるから、その分リスクにもなる。

そもそもそのリスクは取らずに追い込むという狙いだったのかもしれない。

女子サッカーの魅力

ここで女子サッカーの魅力について少し触れたい。

女子サッカーの魅力は、

①フィジカルコンタクトが少ない ②スピードが遅いの二点だと考えている。

 

まず、女子サッカーは①フィジカルコンタクトが少ない。

故に、時間稼ぎや判断の分かれるシーンが少ない印象を持つ。

 

次に、②試合の展開がゆっくりじっくりしている。

サッカーはよくチェスに例えられる。

現代サッカーを象徴するポジショナルプレーもここから考えられる。

女子サッカーはフィジカルコンタクトが少ない分、

人の配置、動かし方、ボールの回し方に着目して観戦ができる。

セットプレーから2失点

試合開始からゲームの流れはスウェーデンが握る。

日本は5-4-1のブロックを作って引いているものの、ボールの取りどころが定まらない展開。

お互いにチャンスを作れないまま時間が過ぎたが、前半の32分。

熊谷の与えたFKをスウェーデンペナルティエリア内に高めに放り込む。

日本とスウェーデンの身長差を考えれば妥当な判断。

一度は日本がボールにアタックするも、大きくクリアすることが出来ず、ゴチャッとした流れで先制を許す。

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日本のここまでの戦い方を見ていて、期待をしていただけにこの失点は大きな意味をもつ。

というのも日本はこの試合、ここまでチャンスらしいチャンスを作れていなかった。

チャンスが作れなくとも時計の針が進めば自然とゲームは動くのだが、この段階での失点は痛かった。

結果的に日本はシュートすら打たせてもらえずに前半を終える。

流れを変える交代カード

この試合を日本目線で見ると交代カードが冴えていたと言える。

45'~ 遠藤純

日本は後半頭から杉田妃和に代えて遠藤純を投入。

これが当たったというか、今大会の元々の先発は遠藤だった。

前回のワールドカップ、世代別での経験を見るに杉田はやれると思っていたし、

杉田がベンチにいることに少し不満な自分がいた。

 

けれど、この試合の杉田は精彩を欠いていたように見えた。

ワールドカップという舞台の重圧に気圧されたのか、

このチームのスタイルに合わないのか、

攻撃にも守備にも迷いのような、殻に篭った45分間だった。

 

一方の遠藤はいつも通りの切り込み隊長ぶり。

左利きであること、持ち前のスピードを活かして、左サイドを制圧する。

日本は遠藤にボールを預けておけばいい、という意図を持ってプレーしていた気がする。

 

そうして少し立て直して始まった後半だったが、

後半6分、苦手なCKからPKを献上してしまう。

ニアを通り抜けたボールが長野風花の手に当たり、VAR判定の結果PKに。

審判のマイクから発される「Number10.Hand.Penalty」がスタジアム中に鳴り響き、(すごい演出だった、今のサッカーってここまで進歩してたんだ。)ペナルティキックで失点。

52'~ 植木理子

屈強なスウェーデン相手に2点差をひっくり返さなくてはいけなくなった池田監督はここで手を打つ。

 

後半7分、CF田中美南に代えて植木理子を送り出す。

ここまで田中が小柄な体をうまく使いながら献身的にポストプレー、被ファールをしていただけにこの交代は驚いた。

が、この交代が日本に勢いをもたらす。

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交代で入った植木は残り時間のスタミナを全く考えていないがの如く前線から全力でプレス。

交代選手が最前線で息を吐くこのプレーをしてくれると日本としても勇気が出る。

 

ここから少しずつ日本の流れになる。

これは植木が一人で手繰り寄せた流れ。

やっぱりサッカーにおいて戦術の前、大前提にパッションが必要。

 

何本か惜しいシーンが続き、「この時間で一点が取れれば…」という流れの真っただ中、

後半29分、相手右サイドを強引に反転し突破しに行った植木がペナルティーエリア内で倒されPK獲得。

 

長谷川か、長野か、誰が蹴る…と固唾を飲んで見守ると、

ボールをセットしたのはPKを奪取した植木理子。

 

この舞台この展開でPKを自分が行く、と決断できるストライカーメンタリティにただただ感動した。

結果的にど真ん中に飛んだボールはクロスバーの下に当たり、跳ね返ってクリアされ、PKは失敗。

 

「ここで一点返せてれば…」とは誰もが思ったろうけど、

交代で入ってきて一人で前線を引っ搔き回し、一人で流れを変え、自分の力でPKを獲得。そのPKを自分が蹴るというこの一連の流れには感服だった。

 

その後、後半34分にはプレスに行った際に相手と交錯し、女子サッカーでは珍しいイエローカードをもらっており、ここまで気持ちを前面に押し出せる選手なんだと感じた。

彼女のプレーぶりには胸を打つものがあった。

80'~ 林穂之香、清家貴子

後半35分、マイナビ仙台&U-20ワールドカップ優勝コンビの長野風花と宮澤ひなたを下げ、林穂之香と清家貴子がピッチイン。

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この交代でさらに日本はペースを掴む。

後半41分には藤野がペナルティエリアギリギリのいい位置でファールを受ける。

と、そのFKを自身で打ちに行く。またもクロスバー

クロスバーの下部に当たり、落ちたボールはGKの後頭部に当たり、そのままポストに当たり、それでもゴールラインを割らない。

 

「今日の日本はついてない、ゴールに嫌われてる…」

と思った後半42分。

左サイドに開いてボールを持った遠藤から鋭い斜めパスが清家に入る。

清家は前を向き、低いクロス。

相手DFに触られるも、女子サッカー特有の尻餅クリア。ボールはその場(ペナルティエリアど真ん中)に残る。

いち早く反応した林が押し込み、日本が交代選手によってついに一点を返す。

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その後も攻め続け、アディショナルタイムは異例の10分。

ただ2点目を奪うには至らず、1-2で試合終了のホイッスルが鳴った。

悔しさに向き合って

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悔しい。

強い、やれる、期待を抱いただけに悔しい。

試合後は多くの選手が泣き崩れる中、この試合ひと際輝いていた長谷川唯だけは涙を見せなかった。

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選手が一番悔しいだろうけれど、

この現実に向き合い、しっかりと受け止めて来年のオリンピックでまた躍動する撫子魂を見せてほしい。

歴史を塗り替える

歴史は塗り替わる。ごく自然の流れだ。

世界情勢が刻一刻と変化し、サッカーを取り巻く環境、設備等も進化していく。

そんな中、記録保持者や過去の歴史は偉大なものだが、

超えていかなければいけないのも確か。

今大会でも何個か歴史に追いつく瞬間を垣間見た。

ワールドカップ得点数

2011年ドイツ大会。日本がワールドカップの舞台で初めて優勝した年。

この大会でチームの中心、澤穂希は5得点を挙げ、

ワールドカップひと大会の日本選手最高得点を保持している。

 

今大会、宮澤ひなたがその記録に並んだ。

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惜しくも偉大な先輩をこの大会で追い抜くには至らなかったが、

まだ23歳、ワールドカップ初出場の彼女がこの記録をたたき出したことは今後のなでしこジャパンにとって大きな意味をもつかもしれない。

チーム得点数

今大会の得点数は5試合で15点。

今までのワールドカップでは2011年ドイツ大会で6試合を戦って12点。

 

チームとしてのひと大会の得点数も更新しており、時代の変化を感じる。

終わりは始まり

“また強くなって戻ってきたい”

ひと回り以上も大きい相手と身を粉にして戦う彼女たちを見て、

心を動かされた人は少なくないのではないか。

 

彼女たちも自チーム、若しくは新たな挑戦をし、日常を始める。

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見えないところで頑張る彼女たちに感化され私たちも自己研鑽を怠ってはならない。

心に青い炎を灯し、今日も一生懸命生きようと思う。